炭素税とは

地球温暖化を食い止めるために、世界各国でさまざま対策が進められています。日本でも「2050年カーボンニュートラル」を目標に掲げています。その手段のひとつとして「炭素税」の導入が検討されています。

炭素税とは、化石燃料や電気を利用した際その使用量に応じて課せられる税金のことです。

化石燃料を利用すればするほど二酸化炭素排出量の増加につながります。その使用量に応じて課税される仕組みがあれば、多くの化石燃料を使う製品の価格は上昇することになります。この価格上昇によって二酸化炭素排出量の多い製品の需要を低下させることが炭素税導入の目的です。日本では排出される温室効果ガスの9割が二酸化炭素であることがわかっており、有効な地球温暖化対策として、注目されています。

「カーボンプライシング」とは

炭素税について考える時必要になるのが「カーボンプライシング」の概念です。カーボンプライシングとは、日本語では「炭素の価格つけ」などと呼ばれています。二酸化炭素の排出量に応じて企業や家庭にコストを負担してもらう仕組みを言います。カーボンプライシングの代表的な制度に「炭素税」があります。

日本の導入状況は?

日本では2012年に炭素税の一種である「地球温暖化対策のための税」が導入されています。国民への急激な負担の増加を避けるために、税率は2012年から3段階で引き上げられ現在はco2換算で289円/1トンが化石燃料の購入時に課税されています。しかし、この税率はすでに炭素税を導入しているヨーロッパ諸国の税率と比較すると格段に低く、環境省は「2050年カーボンニュートラル」の目標を実現するためには、現状よりもさらに本格的な炭素税の導入が必要不可欠との見方をしており、今後、現在の温対税の増税または新たな炭素税の導入のいずれかを選択することを想定しています。

海外での「炭素税」導入事例

フィンランド 世界ではじめて炭素税を導入した国です。1990年の導入開始から現在に至るまで見直しを続けながら制度を維持しています。税率については当初より約60倍にまで引き上げられています。

スウェーデン 1991年に炭素税を導入した炭素税先進国といえます。世界的にみても高い税率設定ですが、反対に法人税については大幅な引き下げを行うことで国民の税負担を押さえ、結果的に二酸化炭素排出量の削減とGDP成長の両立を実現しています。

フランス 2014年に化石燃料の消費に課税する形で炭素税を導入しました。税率は段階的な引き上げが続いており2030年までの税率アップがすでに決定しています。税収の使用用途については競争力確保・雇用促進のための税控除、交通インフラグリーン化のための資金として充当されます。

炭素税を導入で期待できる効果

炭素税を導入の検討がされているいまだからこそ、気にかかるのは「炭素税導入によって本当に地球温暖化対策としての効果があるのか?」という点です。炭素税導入によるメリットは以下3点と考えられています。

・製品価格インセンティブ効果 ・社会への効果 ・環境対策財源への効果

炭素税導入によって製品の価格が上昇すれば、その製品が持つ競争力は低下しかねない。そのため、より魅力ある商品や炭素税がかからない(製造過程で二酸化炭素を排出しない)商品の開発につながっていくと思われます。企業は炭素税を削減すればするほど経済的メリットが生まれるわけです。

 

実際に本格的に炭素税が導入されれば、大きな話題になると思われます。より多くの人が二酸化炭素排出削減に向け具体的な行動を起こすはずです。さらに、炭素税による税収が増えれば、環境対策に必要な財源の確保にもつながります。

炭素税導入でのデメリット

炭素税導入でのデメリットも、勿論あります。最も懸念されるのは、炭素税負担による日本製品の国際的競争力の低下です。炭素税導入後の日本製品は、炭素税を導入してない国の製品と価格面でハンデを背負うこととなります。そのほか低所得者への負担増が懸念されています。消費税と同じように、所得が低い世帯ほど負担が大きくなると考えられています。

 

地球温暖化が予想以上の早いペースで進んでいるため、炭素税を導入は必然だと思われます。炭素税を導入を通じて環境問題への取り組みについても意識が高まることが大切だと思います。